開発・コード

Cognition、Inkling-Smallベースのコード特化モデル「SWE-2 Flash」を発表するも重みは非公開

開発エージェントDevinを手がけるCognitionは11月4日、Thinking MachinesのInkling-Smallから派生した2760億パラメータ(アクティブ120億)のコードモデル「SWE-2 Flash」を発表した。11月末までDevin内で無料で提供されるが、ダウンロードは不可。Cognitionはサイバーリスクを非公開の理由に挙げている。

すりガラスの鐘の中に閉じ込められた光る折り紙の鳥と、周囲に漂う設計図の紙。
AI生成イラスト

開発エージェントDevinの開発元であるCognitionは、2026年11月4日、エージェントの日常的なタスク(コードレビュー、自動化、小規模な機能追加、ドキュメント更新など)向けに設計されたコードモデルSWE-2 Flashを発表した。このモデルはThinking MachinesのオープンウェイトモデルInkling-Smallをベースに構築されており、Cognitionは「完全な米国産」モデルであると説明している。しかしベースモデルとは異なり、ダウンロードはできない。同社はサイバーセキュリティ上のリスクを理由に、重みを公開しない方針を取っている。

オープンなベースモデルを独自の学習で進化

Inkling-Smallは、総パラメータ数2760億のうち、各トークンで120億のみがアクティブになるMixture-of-Expertsモデルだ。Hugging Faceのモデルカードによると、42層構成で、各トークンは256エキスパートのうち6個(加えて2個の共有エキスパート)にルーティングされ、テキスト、画像、音声の入力を受け付ける。その重みはApache 2.0ライセンスの下で公開されており、派生モデルを非公開のまま利用することが法的に認められている。

Cognitionによると、従来の学習手法に加え、強化学習の前に今回初めて中間トレーニング(mid-training)のフェーズを導入したという。科学論文、ブログ、コードなどからなる数兆トークン規模のデータを3段階に分けて学習させ、最も希少で質の高いデータがプロセスの最終段階で処理されるよう設計された。これに続く強化学習フェーズでの性能向上は、SWE-2のときよりも多様で厳密に検証されたタスクを用いたことによるものが大きいと同社は説明している。

その効果は一部のベンチマークにおいて顕著に表れている。Terminal-Bench 4.0のスコアは、Inkling-Smallの0.9%から20.0%へと急伸し、FrontierCode 2.0では3.2から24.0へと向上した。Cognitionは、SWE-2 Flashが同社の比較表に掲載されたすべての米国製オープンウェイトモデルを上回っており、これにはサイズが3倍大きいBeam 1.0やMuse Spark Openも含まれると主張している。

SWE-2より小型、全方位で優れているわけではない

Cognitionが提示した比較表は、このモデルの限界も示している。上位モデルであるSWE-2(総パラメータ数2兆8000億、アクティブ1040億)と比較すると、SWE-2 FlashはFrontierCode 2.0でわずかに上回る(24.0対23.8)ものの、Terminal-Bench 4.0(20.0対27.3)やDeepSWE 1.1(60.1対73.0)では大きく水を開けられている。また、「米国のオープンモデル」という枠組みを外れれば、さらに高いスコアを記録するモデルも存在する。同表内において、DeepSeek V4.1 FlashはTerminal-Bench 4.0で42.3、DeepSWE 1.1で77.0を記録しており、Claude Haiku 5.5もFrontierCode 2.0で上回っている(27.7)。

利用形態としては、SWE-2 FlashはDevin DesktopおよびDevin CLIで提供され、Pro、Max、Teamsプランの加入者向けに11月末まで無料で提供される。CognitionはSWE-2に比べて5倍安価かつ3倍高速であると謳っているが、トークン単位の料金表は公開されておらず、Devinを介さない単体APIも用意されていない。ブログ記事に掲載された速度のデモ(毎秒200トークン対60トークン)は、キャプションに明記されている通り、実際のセッションをシミュレーション上の速度で再生したものであり、本番環境のサービス測定値ではない。

サイバーセキュリティを理由に重みを秘匿

最も議論を呼んでいるのが、モデルの配布方針だ。Cognitionは「防御側を支援するため」にサイバーセキュリティのタスクで特別にモデルを訓練したと述べており、ExploitBenchのスコアは11.3%から34.8%へと跳ね上がった。しかし、これらの能力は攻撃者にも悪用され得るため、同社は当面の間、重みを公開しない決定を下した。同社は業界パートナーや研究機関が自身の環境でモデルをファインチューニングおよび実行できるセキュアアクセスプログラムを準備中であり、「数週間以内」に詳細を発表するとしている。

編集部の見方

SWE-2 Flashは明確なトレンドを象徴している。エージェントの開発元は、大手研究機関のモデルを単に接続するだけの段階を脱し、オープンなベースモデルをもとに自社製モデルを構築して運用コストを下げる動きを見せている。Inkling-Smallに対する大幅なスコア向上は特化型トレーニングの有効性を示しているが、すべての数値はCognition自身の測定によるものであり、ダウンロードもDevin外部からの呼び出しもできないため、一般公開モデルと同じ条件での比較は難しい。前日に発表されたRicursiveのRipple-65B Previewのような実際に手に入る「米国のオープンモデル」との比較には、いささか無理がある。さらに、訓練によってエクスプロイト性能を3倍に高めた上で、サイバーリスクを理由に重みを非公開とする判断は、今後繰り返されるであろう論点を投げかけている。Apache 2.0で公開されたオープンモデルをベースにしていても、派生した成果物は再びクローズドになり得、誰に重みへのアクセスを認めるかは、開発元の裁量に委ねられることになるのだ。

出典

  1. Cognition — Introducing SWE-2 Flash(2026年11月4日) 一次情報
  2. Cognition (X) — SWE-2 Flashの発表 一次情報
  3. Cognition (X) — 11月末までの無料提供と重みアクセスプログラム 一次情報
  4. Thinking Machines — Inkling-Small モデルカード(Hugging Face) 一次情報

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