FactoryがDroid 1.0をリリース:プログラムを生成して数百回ものツール呼び出しを連携するコーディングエージェント
Factoryは開発エージェントのハーネスの最新版となるDroid 1.0を発表した。最大の変化は、モデル自身がツールを呼び出す小さなJavaScriptプログラムを記述する点にあり、これによりAPIリクエスト数と消費コンテキスト量を削減する。FactoryはTerminal-Bench 4において、Codex、Claude Code、Cursorを上回るスコアを低コストで達成したと主張しているが、これらは同社独自の測定結果である。

スタートアップのFactoryは10月29日木曜日23時31分(パリ時間)、開発エージェントのエンジンにおける過去最大のアップデートとなるDroid 1.0を発表した。Factoryは自社でモデルを開発しているわけではない。同社のプロダクトはいわゆる「ハーネス」であり、モデルを取り巻くシステム全体(指示、ツール、結果の返却方法、実行ループ)を指す。同社は、モデル開発元が自ら設計したエージェントと比べても、より高精度で低コスト、かつ高速であると謳っている。
ツールを逐一呼び出す代わりにプログラムを記述する
Droid 1.0の中核をなすのが、今回デフォルトで有効化されたプログラムによるツール呼び出し(programmatic tool calling)だ。従来のエージェントループでは、モデルがツール(ファイル読み込みやコマンド実行)を呼び出し、その結果をコンテキスト内に受け取ってから次のステップを決定する。そのため、ステップごとに新しいリクエストが発生し、毎回プロンプト指示と履歴全体が送信される仕組みだった。
Scriptツールを使用すると、モデルは代わりにツールの呼び出しを自身で連携処理する小さなJavaScriptプログラムを記述する。このプログラムは、ファイル、ネットワーク、システムへの直接アクセス権を持たないサンドボックス内で動作し、Droidのツールを介してのみ処理を実行できる。未加工の結果(ファイル内容、ログ、検索結果)はプログラム内の変数に保持され、モデルはプログラムが出力した情報のみを読み取る。Factoryはこの利点として、コンテキストのクリーン化、リクエスト数の削減、そしてモデルが途中でケースを「見落とす」リスクのない決定論的な検証の実行という3点を挙げている。
同社は自社の利用セッションから2つの事例を示している。Linearのチケット整理(151件のチケットを移動して検証、計312回のツール呼び出し)では、直接呼び出し方式の推定36リクエスト・310万トークンに対し、2リクエスト・約61,000トークンで完了した。また、5,384件のCIタスクのレビューは2リクエストで収まり、モデルに返されたのはわずか5つの数値のサマリーのみだった。Scriptモードは、OpenAIやAnthropicの主要モデル(GPT-6.1 SolやClaude Opus 5.5など)およびKimi K3でデフォルト有効となっている。
Factoryはまた、セッション開始時の初回リクエストも軽量化し、20,887トークンから13,055トークンへと削減(−37%)した。これは主に、Droidが最初に送信するツール定義を11個から2個に絞り、残りをオンデマンドで読み込む設計に変更したためだ。さらに同社は、無限ループ防止策(同一ツール呼び出しの6回連続での停止など)や、アプリケーションの起動速度の大幅な向上についても言及している。
Factory独自のベンチマーク結果
Terminal-Bench 4において、Factoryは同一モデルを用いた他社ハーネスとの比較を公表している。GPT-6.1 Solでは、DroidはCodexより3.5ポイント高いスコアを記録し、コストは12%低かったものの、所要時間は10%長くなったという。Claude Opus 5.5では、Cursor、OpenCode、Devin、Claude Codeと比べて3.0〜7.6ポイント上回り、コストは最大24%削減されたとしている。なお、CursorはOpenAIのモデルへのアクセス権を持たないという理由から、GPT-6.1 Solの比較対象には含まれていない。
これらの数値はFactory独自のものであり、第三者による検証は行われていない。ブログ記事の末尾に記載された測定手法には留意すべき点がある。コストと所要時間は3回の試行すべてで両ハーネスが成功したタスクのみを集計対象としており、Anthropicのモデレーションにより遮断されたタスクはClaude Opus 5で再実行され、Devinがユーザーへの質問で処理を停止したタスクは、Codexが成功していれば成功扱いとしてカウントされている。
利用方法
Droid 1.0は現在、macOSおよびWindows向けのデスクトップアプリとターミナルインターフェースで利用可能だ。同じエンジン上で独自のツールを構築するために、FactoryはNode環境からDroidを起動し、複数ターンのセッション維持やMCPを介したカスタムツールの提供が可能なTypeScript SDK(@factory/droid-sdk)も提供している。
編集部の見方
Droid 1.0は、コーディングエージェントにおける重要なトレンドを象徴している。性能向上はもはやモデルそのものからだけでなく、モデルの動かし方からもたらされるという点だ。ツールを統括するプログラムをモデル自身に書かせるというアプローチ自体は目新しいものではないが(Factory自身もCodeActやCloudflare、Anthropic、Codexの先行研究を挙げている)、マルチモデル対応の商用エージェントにおいてこれをデフォルトの挙動にしたことは、フロンティアモデルの事前計画能力に対する明確な賭けと言える。特に経済面のメリットは明快で、長期的なタスクにおいてリクエスト数とコンテキスト量を削減することは、運用コストの直接的な圧縮につながる。ただし、CodexやClaude Codeとの比較データはあくまで社内測定によるものであり、手法の選択にも議論の余地がある。真価の判定には第三者による検証を待つ必要がある。
出典
- Factory(X)— Droid 1.0の発表 一次情報
- Factory — Droid 1.0: Building a Frontier Harness 一次情報
- Factory — Droid TypeScript SDKドキュメント 一次情報
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