BioBasicsBench:OpenAIとLigo、生物学実験室の日常的な100のタスクでAIエージェントをテスト
OpenAIは11月6日、酵素設計を手がけるバイオテック企業Ligoと共同開発したBioBasicsBenchを発表した。電気泳動ゲル、培養シャーレ、顕微鏡画像、シーケンスファイルといった生の実験データに基づくベンチマークである。GPT-6 Astraが66.7%の得点を獲得し、GPT-5.6 Solの43.8%を上回ったが、評価対象はOpenAIのモデルのみにとどまる。

AI向けの科学ベンチマークの多くは、論文掲載用に選別され、すでに整理された図表を使用している。しかし、生物学の実験室における実際の現場作業は、失敗した実験、あいまいな画像、矛盾する対照実験(コントロール)など、より煩雑である。OpenAIが11月6日に発表し、酵素設計を専門とするバイオテック企業Ligoと共同で構築したBioBasicsBenchが測定しようとしているのは、まさにこの現実である(発表)。
論文の図ではなく、実験現場の生データ
このベンチマークは、ゲル上のDNA断片サイズの読み取りといった単純なものからアッセイの詳細な解析まで、日常的な100のタスクで構成され、タンパク質、イメージングおよびサイトメトリー、定量、核酸、クローニングの5分野に分かれている。データには、ゲルや培養シャーレの写真、顕微鏡画像のスタック、未加工のシーケンスファイル、プレートリーダーのエクスポートデータ、実験室での手作業の動画、撮影された手書きノートなど、研究者が実際に扱う素材が用いられている。
各タスクは科学者が自らの実験をもとに作成し、専門家による採点基準を設けた上で、外部の博士号保持者1名を含む3回の査読を経ている。採点方式では評価項目ごとに得点が割り振られ、データから結論を導き出せないと判断したこと自体にも点数が付与される。
OpenAI単独のランキングでAstraが首位に
全モデル共通の最高推論設定において、GPT-6 Astraは66.7%の得点を獲得し、GPT-6.1 Sol(62.0%)を上回り、GPT-5.6 Sol(43.8%)を大きく引き離した。OpenAIは印象的な例を挙げている。Astraは、対照シャーレに誤った抗生物質のラベルが貼られていることに気づいて除外したり、細胞が「消失」したように見える一連の画像が、実際には顕微鏡の焦点深度スキャン(Zスタック)であることを見抜いたりしたという。
一方で同社は、失敗例も示している。Astraは馴染みのある仮説を優先して対照実験が示す事実を無視し、誤ったコロニーを選択したほか、自らの結論と矛盾する観察結果を排除したり、あるコロニーのカウントを約12%過大評価したりした。OpenAI自身が述べているように、これらのスコアは、モデルが実験室において直ちに信頼できる判断を下せることを意味するわけではない。
編集部の見方
BioBasicsBenchは的を射ている。ゲルの読み取りや対照実験の確認といった地道な作業こそ、実験室アシスタントの成否が数週間単位の時間の節約、あるいは浪費を分ける場面だからである。「結論を出せない」と認めることに対して得点を与える設計は最も興味深い点である。科学において過度の拡大解釈は最も代償の大きい誤りだからである。しかし、この評価には明らかな限界がある。OpenAIとパートナー企業が設計したベンチマークにおいて、評価されたのはOpenAIのモデルだけである点だ。他社のモデルで測定されない限り、ここでわかるのは主としてAstraが前世代から大幅に進歩したということであり、競合と比べてどの位置にいるかではない。なおOpenAIは、こうした能力の追跡がバイオセキュリティへの影響を評価するのに役立つとも明記しており、スコアの上昇に伴ってこの問題の重要性はさらに増すだろう。
出典
- OpenAI — Measuring how AI agents handle everyday wet-lab science (2026年11月6日) 一次情報
- AI Affairs — OpenAI introduces BioBasicsBench to test AI agents on wet-lab tasks (2026年11月7日) 二次情報
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